「知っていますか?ハンターのこと」


ハンター入門講座(エゾシカ活用研究家 板倉修一)2021.12.5


エゾシカを始め、クマ、キツネ数を増やしながら野生動物たちの街への進出が相次いでいる。種の保存は生き物の業。一方、人間世界は高齢、少子。種の保存など夢のまた夢。おまけにウイルスにも攻めたてられて人口は減るばかり。街中で野生の本能をむき出しにされれば、人間などひとたまりもありますまい。こうした中、野生の侵略の前に立ちはだかり、農作物への被害を食い止め、無力な市民を守ってくれているのが狩猟者の方々だ。人と野生との共存には欠かせない存在。だが、1975(S50)当時、518000人もいた狩猟者は2014(平成26)には194000人にまで減少。どんな事情があるのだろうか。12/5。現役ハンターで、当倶楽部会員の板倉修一氏から知られざる現場の話を聴くことができた。さすがはハンター講師!猟時の帽子、オレンジベスト着用という現場そのままのユニークなスタイルでの登場。模擬銃はじめロープ・手袋など現場で必要な所持品すべてを持参。概要は以下の通り。


模擬銃で銃の取り扱いについて説明の写真
模擬銃で銃の取り扱いについて説明
ハンター歴8年。遠軽町の金子恵美さんの写真
ハンター歴8年。遠軽町の金子恵美さん


■ハンターになるには高いハードル!


1,ハンターがエゾシカを獲る理由

■通年・一部ハンターのみ

① 農作物・森林被害低減の個体数調整:報奨金あり

 

■猟期 10月~3月

② 食肉・ペットフード業者への販売:3000~8000円

③ 自家消費等 ⇒ ほとんどのハンター

<有害駆除>

季節に関係なく、猟経験のある人が自治体や地元農家からの依頼で鳥獣を捕獲すること。通年・一部ハンターに限られる。

 

<狩猟>

秋から春(道内では10月から3月)にかけて解禁される猟期内に国立公園や鳥獣保護区以外で行われる趣味の狩猟をいう。  



2、ハンター(銃猟)になるには

■銃所持

 <初期費用・・・約24万円>

 <維持費用・・・約30,000/年>

■狩猟免許

 <初期費用・・・約18,000>

 <維持費用・・・約28,500/年> 

■狩猟 出猟1回  20,000

 

銃猟には費用がかかります!

・銃を持つにも!

・免許取得にも!

・出猟にも!

 

生計を立てるのは難しいんです。



3,ハンター(銃猟)になるには

① 銃砲所持許可の取得(公安委員会)

  ・・・銃砲を所持するための許可

     3年ごとに更新

② 狩猟免許の取得(都道府県)

  ・・・狩猟鳥獣を捕獲するための許可

     3年ごとに更新

鉄砲所持許可は20歳から。精神科にかかっていたりするとダメ。

年齢上の有限はないが、75歳になると診断を受けなければならない。

ハンター保険に入らなければ許可は出ない。入っていても過失責任となれば保険は出ない。自分で補償する必要がある。

銃の安全性:引き金を引かなくても転倒などのちょっとした衝撃で銃は暴発する。なので発砲直前まで装弾しないことは勿論のこと、実包が入っていなくても銃口を絶対に人に向けないことが鉄則である。銃は常に専用の袋に入れて持ち歩く。



4、銃猟に使用する銃

■散弾銃(200~700m)

 散弾からスラッグ(一発弾)まで使用可能

■ハーフライフル銃(700m)

 専用弾(サボットスラッグ)

■ライフル銃(1500~4000m)

 6~10.5mmライフル弾

■空気銃(300~400m)

 4~7.62mmのペレット(金属弾)

シカは生命力が強い。最後に止めを差すのが辛い。できるだけ苦痛を与えないように心掛けている。捕獲したシカの一頭、一頭の顔を今も忘れることはない。

人間に捕獲されやすいシカとされにくいシカがいる。獲られにくいシカは山の奥にいる。危ないことが分かっているからだ。

麻酔銃はを使えるのは、動物園、獣医だけ。

弾を譲り受けるにも警察の許可がいる。鉛弾は銃弾としての性能は優れているが、残滓を食べた猛禽類の神経に影響(鉛中毒)を及ぼす。道内のエゾシカ猟ではすでに使用が禁止されており、今後段階的に全国で規制されていく。



5、銃猟の方法

■忍び猟

 山や森の中を歩きながら探す

■流し猟

 林道を車で走りながら探す

■巻き狩り

 集団でおこなう猟

 追い込むチームと待ち伏せするチームで実施



6、捕獲

① エゾシカ発見

② 安全確認

  ・エゾシカであること

  ・後方に遮蔽物があること

③ 発砲

  目標:首・バイタルエリア

④ 止め差し・放血

苦痛を与えず、きれいな姿で捕獲したいので首を狙うことが多い。(クリーンキル)。狩猟が古くから文化として定着している欧米では、クリーンキルが狩猟者の不文律であり、頭を撃って獲物の尊厳を傷つけたり、臓器を撃って苦痛を与え食肉利用もできないような捕獲方法は国際的な批判や軽蔑の対象になる。

銃は練習しないと狙ったところに当たらないので、バイタルを外して半矢にして逃がしてしまったり、不必要な苦痛をエゾシカに与えてしまうこともある。



12/18.北海道新聞朝刊(31面)より引用。「ヒグマ駆除の際、適切に発砲したのに、道公安委員会から違法に猟銃の所持許可を取り消されたとして、北海道猟友会砂川支部長の池上治男さん(72)砂川市が道を相手取り、処分の取り消しを求めた行政訴訟の判決で、札幌地裁は17日、池上さんの請求を認め、公安委による処分を取り消した。・・・知床財団(オホーツク管内斜里町)の山中正美・前事務局長は、「ヒグマ対応に当たる現場の側として妥当な判決だ。今回の発砲が違法となれば全道のハンターが銃によるクマ駆除から手を引く恐れがり、困るのは住民だ…」と評価した。