狩猟者の現状と今後の野生鳥獣対策(2022.1.7)

(一社)北海道猟友会 札幌支部 玉木 康雄氏


2022年1月7日。北海道博物館で行われた石狩振興局主催の「石狩地域エゾシカ・ヒグマ・アライグマセミナー」に参加しました。

第2部の「狩猟者の現状と今後の野生鳥獣対策」は非常に興味深い内容でしたので、書き留めたメモを原案として講師に送り、掲載許可と添削を受けましたので掲載いたします。迫力ある写真のご提供も頂きました。


玉木康雄氏の写真
玉木康雄氏

 

<講師紹介>

玉木 康雄氏

創業昭和八年 株式会社玉木商店 玉翠園

玉 木 総 業 株式会社  代表取締役

日本茶インストラクター協会 理事

茶抽出理論・健康科学専任講師

エゾシカ協会講師・猟友会札幌支部防除隊事務局



「私は何のために狩猟をしているか」という言葉で講話は始まりました。答えは「エゾシカを美味しくいただくため」だそうです。「美味しくなければ有効活用には繋がらない」という言葉が続きました。講師は狩猟に関して素晴らしい法律があるとして、まずは「鳥獣法」を紹介されました。


「鳥獣法」第1

この法律は、鳥獣の保護及び管理を図るための事業を実施するとともに、猟具の使用に係る危険を予防することにより、鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化を図りもって生物の多様性の確保生活環境の保全及び農林水産業の健全な発展に寄与することを通じて、自然環境の恵沢を享受できる国民生活の確保及び地域社会の健全な発展に資することを目的とする。 


「鳥獣法」に掲げる目的

   生物の多様性の確保

   生活環境の保全 

   農林水産業の健全な発展(北海道にとって死活問題である)

<最終目的>

²  自然環境の恵沢を享受できる国民生活の確保 

²  地域社会の健全な発展



「狩猟者」とは、①②③に寄与することで国民に最終目的の利益をもたらす「社会的人材」でなければならない。 

この鳥獣法のもと、講師がどんな狩猟をしているかというと「美味しくいただくための忍び猟」が専門であるとのこと。


雪原にての写真
雪原にて
鹿ととバイタルポイントの写真
鹿とバイタルポイント

「忍び猟」とは、自分の気配を消して探索し、獲物に気が付かれないように狙撃ポイントにつき「一撃」で仕留める猟法。獲物に出会うまで、凍てつく冬山を何時間も気配を消しながら進み、仕留めた後は40kg近い重量を23回、険しい山のアップダウンの中、車まで運ぶ。忍びによる「おいしくいただくためのハンティング」は、極めて安全なハンティングでもある。



シカは賢い。生命力も強い。僅かな気配で危険に気づく(スマートディア)。被弾しても50100メートルは気力を振り絞って逃げる。

一発で仕留めれば苦しませないで済む(クリーンキル)。そのために、何処に向けて銃口を向けるか。正確に絞り込んだ直径15cmほどの的をはずせば、苦しませるだけでなく、肉も美味しくなくなる。倒れて涙を流すシカ。「ごめんね」と声をかける。「君の死を絶対無駄にしないからね」と手を合わせる。頂く命に対する責任感を持ち続けたい。美味しく頂くとお腹だけでなく、心も満たされる。このことが、狩猟者が本能的に感じる獲物や自然に対する感謝の気持ちであり、人が本能的に感じる自然環境の恵沢の享受といえる。さて、自分たち狩猟者たちの現状は下図の通り。

 昭和55年に46万人いた狩猟者も平成28年には20万人。20年後、この社会的人材は半分以下の可能性もある。

 


 

しかし、ただ増やせば良いとは思わない。最終的には、先に述べたように国民生活に寄与する真の人材が必要なのだ。

多くの狩猟者は安全に、事故の無いようにと懸命につとめているが、規制を守らないアウトローはどんな社会にも必ず存在する。

猟友会の力だけでこれを防げるものではないが、常に安全啓発に不断の努力を続けている組織が猟友会であることが社会的に周知されるよう願っている。



「将来に向けて一狩猟者としての願い」

①   車両通行可能ゲートを増やしてほしい

②   スノーモービル、バギー、モトクロスバイクなどの違法(開錠)侵入について警告と摘発の強化をお願いしたい。

③   行政と猟友会(狩猟者)が、規制する側とされる側という関係ではなく、鳥獣法の目的に関わる者同士として協力や信頼関係を高め

  ていけたら!狩猟者の公的貢献意識が向上し、社会にとっても必要な優良ハンターの確保に繋がることと思います。

④   猟友会は非営利の公器として社会からの信頼に応えるべく会員へ安全意識向上に努力を続けているが、非会員ハンターの存在他、及

  ばない部分について行政のご理解とご協力を願いたい。(同じ価値観で行政が頼ってくれる猟友会が理想)。


■ 講座をお聴きする中で、心に響いたのは次の一言。

   シカ軍団はハーレム社会。オス1頭が50頭ほどのメスを引き連れている。縄張り意識が強い。しかし、深い雪山を越えるときは、雄

   同士が力を合わせ、キャラバンを組んで移動している。種の保存のために