北海道エゾシカ倶楽部 東野剛巳
北海道には豊富な自然や食材などで、国内のみならず海外からの旅行客をも魅了しています。しかし季節に左右されない平準化した観光客の確保やリピーター客を増やすためには、バス観光に代表されるような従来型の観光では限界があります。最近の海外からの旅行客(リピーター、狩猟民族系)は、旅行先で積極的に活動することを好むようです。例えば、北海道に自然環境が似ているニュージーランドでは、豊富な自然資源を活用してバンジージャンプ、ラフティング、狩猟など冒険心をくすぐるアクティビティ系の観光産業が盛んです。
またマカオのように中国のカジノ特区として資本を集中させ巨大なカジノ街を作り、一攫千金狙う富裕層を相手に成功した例もあります。
そこで北海道の観光資源のなかで、ここでしか楽しめず、また何度も行きたくなるような魅力的なアクティビティがないかと考えたところ、北海道にはエゾシカという貴重な資源があることに気づきました。
それらの資源は、すでに鹿肉や毛皮あるいはアクセサリーとして活用されていますが、今回はエゾシカの狩猟という分野を新たな観光産業として加えたらどうかと考えました。
「エゾシカ協会」のホームページによると、狩猟から肉の消費まで、ヨーロッパの狩猟は個体数管理と同時に鹿肉を得るところにあり、剥皮・解体・製品化されており、また狩猟そのものを有料化して森林保全の財源としている英国では、総合的にマネジメントする組織として「シカ協会」が設立されており、国民の理解と協力のもとに実践的な活動が進めてられているようです。
エゾシカの食材としての活用や普及活動は、現在「北海道エゾシカ倶楽部」により行われており、その結果「エゾシカ肉」は北海道ブランドのひとつとして広く認知されつつあるところですが、エゾシカの狩猟については、狩猟免許が必要であることと厳格な銃刀法の規制により現在ごく一部の人たちしか携わることができない状況のようです。
そこで、北海道の新たな観光産業の開拓およびエゾシカの個体数管理への寄与という観点より、「北海道に規制緩和による狩猟特区を設け、エゾシカ猟を一般に開放して新たな観光産業として立ち上げよう!」というのが今回の提案の主旨です。
つまり、「狩猟(ハンティング)」という分野を(人と動物との共存手段として)たくさんの人の理解と、動物の命をいただくことで成り立っている文化を体験できる場であるという認識を定着させることが一つ。
次に、それが教育事業の一環として体験ができるように、狩猟と猟銃の使用を「狩猟特区」に限り一般人にもエゾシカ猟が解放できるような態勢を整え、その対価として使用料等を徴収して自治体(あるいは事業者)の収入とするということです。
この構想のメリットとして、
① 高齢化が進むハンターの方が若い人たちに技術を伝承する事にも繋がり、これが体験学習型の観光産業として確立できれば地元に雇用が生まれる。
② 狩猟が体験学習型の趣味のひとつとして定着すれば、狩猟ファッションなどの狩猟関連用品の販売や、剥皮・解体・鹿肉料理などの体験学習会、狩猟から派生した商品の販売(剥製、毛皮、料理・・・)などで地元経済が潤うことにも繋がる。
そのメリットの大きさを理解して貰えたら、賛同者も多くなり実現までの道のりも短くなると期待しています。
そこで、最初の土台は行政が作り、後で民間開放という方向で行くと、競争原理が働き市場の活性化に繋がると思います。
将来的に他の地域にもこのシステムが適用されれば、北海道で民間が参入した後、支店という形で他の地域にも行けるメリットがあると思います。
■土台作り・・・銃使用のレンタル制を含めた規制緩和、狩猟時の安全性確保の規制作り、頭数管理の企画立案、保険制度、狩猟エリアの確保など。
ここで一番のハードルとなる狩猟免許および銃所持の許可については、許可権者が狩猟や銃使用にあたって危惧している事例の軽減を図るという視点から、具体的に下記の構想を考えました。
・「狩猟特区」の設立:
柵等により関係者以外の立入り等を厳重に禁止した特定エリアのみ、狩猟免許等を所持しない者でも「狩猟免許要件の緩和」および「猟銃レンタル制」などの法令緩和(但し書きなど)により、一定の許可要件のもとにおいてエゾシカ猟と銃の使用を認める。
「狩猟免許要件の緩和」とは、認可事業者による狩猟に関する適性検査と講習および実習を受講した仮免許取得者は、その「狩猟特区」において猟友会の推薦を受けた者(狩猟マイスター)の引率、指導のもとに限りエゾシカ猟をすることができる。
「猟銃のレンタル制度」とは、厳重な銃器の保管等の基準をクリアした認可事業者のもとでは、銃刀法の但し書きにより狩猟特区において「猟銃レンタル」の事業をすることができ、「仮免許取得者」に銃を貸すことが出来る。
ここで、「仮免許取得者」の誤射等の危険性を極力排除するため、例えば、狩猟時に獲物を見つけてから引率者が弾を渡して装填させる、つまり弾を発射する直前に装填する事を必須項目とし、安全性を極力高めるなどの義務付ける内容の法令を整備することによって、銃所持の許可を持たない者でも一定の要件によりレンタル銃による狩猟が出来るという規制緩和を目指したらどうか。
他にも、引率者がリモコンで銃のロックをしたり解除したりする、リモコンから一定の距離離れると自動的にロックされる、または「人に向けたらトリガーが引けない銃」を作るなら大きな人身事故になりにくいですし、例えば車の人検知システムを応用するなど、技術的に可能なレベルで猟銃の使用許可の目的を実現させる方法は多岐に渡ると思います。
最後に、この狩猟で問題が発生した場合、事故防止策を随時模索し盛り込む事でより安全なスポーツに昇華して行く努力をすれば、今後も継続してみようという期待感が増し、高齢化が進むハンターからの交代がスムーズにできるのではないかと思います。
■2013年12月に訪れたトルコの地で、遠く遥かな北海道エゾシカに思いを馳せていました。
公益社団法人 札幌消費者協会「北海道エゾシカ倶楽部」 代表 武田佳世子
060-0808 札幌市北8条西3丁目 札幌エルプラザ2階
TEL :011-728-8300 / FAX 011-728-8301 E-mail:ezoshika_club@yahoo.co.jp