11月に新潟県と青森県で鳥インフルエンザ(高病原性鳥インフルエンザ)の発生が報ぜられ、さらに流行の広がりが懸念されている。人への感染の心配はないか疑問に思っている人も多いと思うので、鳥インフルエンザについて簡単な解説を試みる。
鳥インフルエンザも人のインフルエンザも共にインフルエンザウイルスによっておこる感染症である。インフルエンザウイルスはその構造などの違いから,A,BおよびCの3型に分類されている。このA型ウイルスが鳥に感染したものを鳥インフルエンザという。その他にもインフルエンザウイルスは豚、馬などの家畜や、アザラシ、鯨などの野生哺乳類への感染が知られている。
本来インフルエンザは野生のカモなどの水禽類を自然宿主としてその腸管内に存在しているもので、水禽類は感染していても発症しない。この水禽類の糞からそのほかの野鳥や家禽への感染がおこる。このような水禽類は渡り鳥であり、渡りの途中で豚などを介してウイルス自体に変異が起こり、人を含む哺乳動物の呼吸器感染を起こすようになったものと考えられている。
更に、インフルエンザウイルスはウイルスを構成する成分の抗原性(免疫抗体を作るもとになる成分)によってH1~H16およびN1~N9 の亜型に分類されている。このH16種、N9種の組み合わせから数多くの亜型が存在することになる。因みに人に大流行を起こすのは、H1,H2、H3とN1,N2の組み合わせによるもので、Aソ連型、A香港型はよく知られている。この様な特定の亜型の組み合わせにより、鳥に極めて高い病原性を有するものを高病原性鳥インフルエンザといい、その被害の大きさからかつては鶏ペストとも呼ばれていた。本病が発生すれば家畜伝染病予防法によって,鳥の殺処分,焼却、埋却、移動禁止、交通遮断などの高度の防疫処置が法的に義務づけられている。
鳥インフルエンザの人への感染については、中国において2014年以降14例の感染例があり、10例が死亡している。
これらの例は生きた鶏に濃厚に接触したり、その糞を大量に吸い込んだりした場合に限られており、日本において普通に生活している人への感染は考え難い。
また、鳥から人に感染したウイルスの人の間での感染は認められていない。因みに国の機関である食品安全委員会は、わが国では人への感染の可能性はないと明言している。また、インフルエンザウイルスは加熱によって感染性を失うので、熱を加える通常の調理でも感染の心配はないものと思われる。
ただし、インフルエンザの感染には本来、種の壁(動物の種を超えて感染がおこらないこと)が存在し、鳥インフルエンザは人には感染しないものと思われてきたが、本来、水鳥の腸管内を自然宿主としていたものが、何らかの変異によって、哺乳動物への感染を起こすようになったことからも、今後人への大流行を起こすウイルスに変異する可能性は否定できないと思われる。
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