下川町からのアクティブ情報に心躍った冬だった。人口約3400人の北海道下川町は山間の地。冬季の最低気温はマイナス36度を記録したこともある。この町がレジェンド葛西紀明選手を生み、そして今、伊藤有希選手、伊東大貴選手らを世界の空へ送り出す。これまでに輩出したオリンピック選手は岡部孝信選手をはじめ、7人もいる。
2017年3月13日の北海道新聞(朝刊)には、「伊藤有終V」の見出しが躍った。
ノルウェーで行われたW杯ジャンプ女子の今季最終戦で、今季5勝目を挙げたのだ。
その勢いは止まらない。更に3月19日。札幌大倉山で開かれた今季国内最終戦で4度目の優勝を果たす。しかも、この時、一本目にはスキー板の左右を間違えて逆に履いていた。
「そのマイナスをものともせずに、優勝することができたことに、今の勢いを感じる」とおっしゃるのは故郷の谷町長。我が町出身の選手たちを誇りとしつつ、父親のように常に温かく見守っている。
レジェンド葛西紀明選手は44歳。3月19日に、こちらはノルウェーで行われたノルディックスキーのW杯で2位。昨年3月以来、1年ぶりに表彰台に立ち、自身が持つW杯の最年長表彰台記録を更新した。3月8日の当HPブログで、既に「木彫りの名人」児玉 光さんにご登場頂いたが、この町は何と多彩な人財群に恵まれた町なのだろう。どんな組織も人が全てだ。才ある人も誰かが見出し、育てなければ芽吹かない。この町は人を育てる町。スキージャンプに於いては、広く町外からの若者も受け入れ、町を挙げてジャンパー育成に取り組んでいる。
先頭に立つのは町長だ。全てにアクティブ。昨年のエゾシカフェスタには、谷町長を筆頭に4人もの役場の方々が参加された。帰途では、エゾシカの話でもちきりだったと伺っている。
下川町は、平成25年に、西興部村、滝上町とともに「オホーツク山の幸活用推進協議会」を設立。エゾシカ有効活用に向けて、各町村の得意分野を生かした共同研究を進めるエゾシカ先進地でもある。それでも尚、私たち素人が催すイベントにまで足を運び、シカ対策の知恵を探ろうとする町の姿勢に、私たちは驚嘆、そして深い敬意を抱かずにいられなかった。
NPOで栄える町とも聞く。谷町長自らNPO法人の理事長として、「日本自治ACADEMY」を率いる。
2017年2月3日には、札幌市内のホテルで、道内で学ぶ7名の留学生をコメンテーターに、これからの国際化や国際交流、さらに、ビジネスの可能性を探る「アジアフォーラム」が実施された。参加者は約100名。各界を代表する方々との懇親会には、我がエゾシカ倶楽部からも10数名が参加した。
さて、本稿を書いているのは2017.3.31。折も折、この日の北海道新聞朝刊は、札幌の不動産仲介業者と下川町が「地方創生に関する包括連携協定」を結んだと報じた。記事によれば、町は都市からの移住を促進したいが、町内には不動産業者がいないため、空き家は多数あるものの移住者への紹介が難しい。そこで、同町の第3セクターが、協定により事業者から不動産業務のノウハウを得て、空き家を希望者に紹介できる体制を整えるとの内容だ。当該事業者にしても、移住促進に関する協定を自治体と結ぶのは初めてという。まさに不可能を可能へと変換していく谷町長ならではの先進的思考とアクティブ性が又一つ、結実した出来事ではないだろうか。
言葉は人を育てる。美しい言葉から勇気を貰い、自らを正すことができるからだ。何気ない日常のメールの中にさえ、谷町長の人となりが滲み出て、時々ハッとさせられることがある。或る日の一文を公開させていただこうと思う。
小さな町の地道な活動ではありますが、例え、スター選手を輩出していても、奢ることなく、誇りを頂きながら、今後も、子供たちの支援をして参りたいと思います。この4月から、札幌より、ジャンプスキー留学として、下川町の道立商業高校に、2名の学生の入学が決定したと聞いています。さらに、選手層が厚くなることを期待したいと思います。
積雪寒冷地である北海道では、「冬」や「寒さ」、そして、「雪や氷」を資源として、「マイナスをプラス」に変える発想が求められているものと思います。
そして、「ウィークポイント」を「チャームポイント」に変えるには、「考えようとする力」と「考える力」が欠かせませんね。
*本ページ作成にあたっては、(公財)全日本スキー連盟、(株)土屋ホームスキー部、下川町長 谷 一之様、
下川ジャンプ少年団コーチ 伊藤克彦様のご協力を得ています。
公益社団法人 札幌消費者協会「北海道エゾシカ倶楽部」 代表 武田佳世子
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