◇◆◇ 身近な生活にエゾシカ皮を!2015.11.15


株式会社 24K 【24KIRICO】高瀬季里子氏


 

2015.11.15(日)

「もっと知ろう!エゾシカのこと」で講師を務めていただきました。要旨を以下にご紹介いたします。今年、37歳の季里子講師。その若さと美しさに、おじさんもおばさんも若者もうっとりと聴き惚れました。肝心の内容については大丈夫?


 

 

父がハンターだったため、幼いころからエゾシカ肉を食べて育った。武蔵野美大で綿、麻を素材に染めと織を学んだが、その頃から皮素材への興味が増した。卒業後は、皮の魅力に引き込まれた。皮は使うほどに味わいが出てくる。こんな素材は中々あるものではない。中でも幼いころから馴染みがあるエゾシカ皮には愛着がある。北海道の素材を再発見し、身近に活用されることを願い、幾何学的なイメージで新しいデザインを提案している。 


テーマは、「平面から立体へ・自然から動物へ・人から人へつながっていく」ということ。

シカ革は日本でも古くから重宝され、薄くても丈夫、柔らかくて軽いという特徴がある。

課題は、皮の流通が無いということだ。皮を集めることからしなければならない。皮は生き物である。放置すれば腐っていく。腐ってから鞣してもボロボロになるだけ。原皮の保管方法は、塩蔵するか冷凍するかだ。お漬物と同じだが、加工場では、塩漬けまでしてもらえない。忙しくてそこまで手が回らないと聞いている。


  

結局、自分でやらなければならない。塩の手配と冷蔵庫が必要だ。ハンターも素人が多いので、皮の剥ぎ方を知らない。野生なので、傷があるうえ、ナイフの傷も入る。傷の部分は使えない。腐った部分もある。使える部分は僅かなため、裁断時の工夫が必要となる。斜めラインでカット、或は細かくカットするなど、どうやったら少しでも良いものができるかを考え続けている。鞣し方法もいろいろある。方法により柔らかくもできるし、固くもできる。シカ皮の良さを生かすような鞣し方が必要となる。


シカ皮の良さは繊維が空気を含んでいることだ。ふっくらとした柔らかくて軽い風合いを保てるような鞣し方をして欲しい。タンナ―(皮から革をつくる職業人)にも技術力の差が見られるので、いろいろなタンナーに頼んでいる。 


制作したバッグ類の写真
制作したバッグ類
製作したバッグ類
製作したバッグ類


 

タンナーは皮を鞣すにあたり、傷の少ない製品を作るために選別をする。皮に青い液体をかけて傷の程度をテストする。傷が多ければ皮は青くなる。エゾシカの場合は、真っ青になる。それだけ傷が多いのだ。だから、エゾシカの場合、このテストは行わない。

 


道内には、鞣す工場がないので流通コストがかかる。製品化し、売って生計を立てていくにはブランド化が必要だ。これ以上のコストダウンはムリ。努力も限界だ。従って、エゾシカ製品の価格は高くなる。しかし、上質なのである。それだけ希少価値があると考えてほしい。野生動物の革は海外では高級品。ぺッカリーの手袋は傷が相当入っているが、それでも高価だ。


 

2008年にエゾシカが大発生した。この年に試作品を作った。肉は使っても皮は捨てていた頃である。利用されずに廃棄物となるのは如何にも惜しい。皮や内臓などを山林に放置すれば、腐敗し、環境汚染の原因となる恐れもある。焼却処分するには費用がかかる。皮を鞣して革に製造できれば、付加価値がつき、身近な生活にいろいろと取り込める。このことを多くの方に知っていただきたい。新技術と伝統の組み合わせでシカ革製品を作っていきたい。大量生産の時代は終わった。一針一針手縫いを施した一点物のBagや、革の作品など手づくりの温かさを感じられるものを提案していきたい。