7月18日、北海道生活環境局エゾシカ対策課主査 木内武雄氏を講師として「エゾシカによる被害状況」について学びました。主査は獣医師でもあるだけに、そのお話は動物に関する視野が広く深いばかりでなく、生命への慈愛に満ちたもの。以下は驚きのエゾシカ事情です。
エゾシカ(雄)は体長:約90~190cm。 体重:約50~130kg。 一夫多妻制であり、雌の受胎率は90%。 生後2年目には次世代シカを出産する。 生活場所は森林。殆どの植物を食べる幅広い植性が森林被害や農林業被害を引き起こす。現在(H23)の生息数は64万頭。農業被害は64億円。つまり、1万頭で1億円の農被害をもたらしている。この64億円は道民が負担していることに気付かなければならない。
スーパーで、道産野菜が店頭に当たり前のように並んでいるが、実は、農家がすさまじい労力をかけ、シカから守った野菜をやっと出荷している。その手間賃は当然、価格に反映される。
シカは賢い。学習能力もある。除草剤使用の畑には目もくれない。有機栽培の畑ばかり狙う。
最近では、貴重な高山植物も食べ始めている。希少植物の遺伝子が消滅すれば二度と生えてこないだろう。樹皮を食べられた樹木は再生できず、豊かな生態系は破壊されていく。
しかし、これらは氷山の一角。目に見えないところでの経済的損失は大きい。
たとえば、列車事故があるとシカの屍体にありつこうとする鷹、鷲が集まってくる。これらの鳥獣は天然記念物。何もできず、彼らがいなくなるまで列車を止めて待つしかない。
(参考)24年度 エゾシカが関係するJR列車支障発生状況(北海道庁資料)
(参考)何故シカは鉄路に侵入するか
自家用自動車とシカが衝突した場合、自損事故の保険に入っておかない限り、破損車体の修復は全額自己負担。街中に出没したシカは興奮状態。大騒ぎとなり都市機能の麻痺を引き起こす。近づけば危険だ。
(参考)「平成25年 エゾシカが関係する交通事故発生事故状況」(北海道庁資料)
最後に主査は、「シカだけが悪いのだろうか」と問いを発せられました。オオカミを絶滅させたのは私達道民。もともと、野山はシカの住処。人間は山ギリギリまで開発しすぎた。 (参考)「一極集中!エゾシカも札幌にやってくる?」
シカも尊い生命である。その生命を奪うのであれば、廃棄物として棄てるのではなく、食として活用することが望ましい。それこそが命を落としたシカに報いることになるのではないかと結ばれました。
シカだけが悪いのだろうか?
公益社団法人 札幌消費者協会「北海道エゾシカ倶楽部」 代表 武田佳世子
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