11.24.東京電力福島第1原発の処理水の海洋放出により、中国が日本産水産物の輸入を全面停止して3カ月。道産ホタテを中国に大量輸出していた道内の水産加工業者が打撃を受けていることを北海道新聞が報じた。
時を同じく(一社)北海道消費者協会が実施した講座「原発処理水と風評被害について考える」を受講した。講師は北海学園大学地域経済学科の濱田武士教授。水産物輸出は北海道経済の要。消費者として見過ごすことはできず、メモしたことを整理しておきたい。
2022年の日本の水産物の輸出額は、3873億円。主な輸出先国・地域は中国、香港、米国で、これら3か国・地域で輸出額の5割以上を占める(図表1-19)。品目別では、中国等向けのホタテガイが断然トップ。日本での主なホタテの生産地は北海道と東北地方(三陸・青森)。いわば、これらの地域は中国に依存していたのだ。そこが崩れた。その穴埋めは容易ではない。
中国以外の国へ販路を伸ばしたいところだが、道新報道にあるとおり「加工」が壁となる。中国は日本から受け入れた殻付きの冷凍ホタテを自国で殻をむいて加工後、華僑ネットワークに乗ってアメリカに再輸出している。香港、台湾等も同様のルートで再輸出することは同じだが、貝柱のみの状態でしか輸入しない。これに対し、輸出側の日本は人口が少なく、加工するための人手が足りず、対応が難しい。
ホタテの価格が徐々に下落しているものの大きく下落しないのは、ホタテは一定期間なら冷凍保存できるため、海洋放出前に中国向けとして用意していたホタテを水産加工業者が保管、値崩れを防いでいるからだ。会場から「十勝地方にはホタテが無い」との声が上がったが、ホタテが無いわけではなく、高値で買っているために市場に出せないのだ。「賠償金貰っているんでしょ。もっと安くならないの?」などという声が出れば努力は水泡に帰す。それでも在庫が積みあがれば、やがては価格が保持できなくなる。そうなれば水産加工業者は今後、生産者から買い取る価格を下げざるをえなくなる。生産者、加工業者ともに状況は深刻だ。どこまで頑張れるかが問われている。
道は消費拡大に向けた緊急対策「食べて応援!北海道」キャンペーンを実施中。今後も影響解消に向けた取り組みを積極的に進めていく方針だ。ふるさと納税の返礼品、学校給食・社員食堂に安く配る。すると食材納入業者の仕事が減るかもしれない。消費者は消費者で、他のモノを食べてはいけないような錯覚に陥ることも考えられる。大なり小なり必ずどこかにひずみが出る。
「食べて応援…」には限界がある。いつかは終わる。その時のショックを和らげるためには、出来る限り短期間でソフトランディングしたいもの。中国との取引再開、更には輸出先をアジア圏に拡大していくことが模索されている。