8月1日。NHK「BSプレミアム」ダークサイドミステリー「三毛別ヒグマ襲撃事件の謎に迫る」(21時~22時放映)を見た。104年前に苫前町三毛別(さんけべつ)で起きた目を覆いたくなる惨事である。
苫前町には何度か仕事で行っている。風の町の名にふさわしく数十基の風車が立ち並ぶ美しい景観。だが、驚くことにバス停、ホテルなど至る所にヒグマが開拓者の粗末な家を襲うポスターが張ってあり、役場前駐車場にはクマのモニュメントまである。
聞けば、大正時代に起きたヒグマと人間との日本史上最悪の事件があったとのこと。本来であれば、人間を恐れるはずのクマ。そのクマが、冬季の空腹に耐えかねて開拓民の住む粗末な人家近くにやってきた。軒先には、大好きなトウモロコシが干してある。苦労せずに食物にありつけることを知ったクマは、また、現れた。この時は、鉄砲で迎え撃ったものの当たらずクマは逃げた。悲しいことに道外からやってきた開拓民はクマの知識など持ち合わていない。これで大丈夫と油断、トウモロコシは変わらず干され続けた。そして、後日、またやってくる。家にいたのは女子供だけ。クマを見て驚きの声をあげる。悲鳴を上げることはクマには弱みを見せること。この家の主が帰宅したときは家族が殺された後だった。
一方、クマは「人間は怖いものではない」と知る。人間の肉の味も覚えたクマはエスカレート。人里に頻繁に現れ、10数人が犠牲となる。結果として、クマに追われるように一つの集落が消滅した。番組の意図は、野生を甘く見てはいけないということだ。クマと人間が共に手を取り生きていくことはできない。野生との共存は、まずは彼らの生態を知り、習性を知ることから始まる。正しい知識を得、それを世間に普及していく以外にないのだ。不幸な事件を誘発する原因の99%は人間にあるとの結論だった。
確かに…。例えば…。
野生動物はペットではない。餌付けなどしてはならないのだ。野生は野生の掟に任せよう。彼らは厳しい自然環境の中で、自分の力で餌を探し生きていく。それが野に生きる者のルール。よそ者である人間が介入などすべきではない。野に棲む者と人間の境界を物理的にも心理的にも守らなければならない。その一線を踏み越えたとき、野生の本能は牙をむいてくるだろう。
この番組作成にあたっては、自身も「怖いですよ」と言いつつ、銃を構えながら現地の案内・護衛を兼ねて取材協力していたのは苫前町の林 豊行氏だ。氏はフェイスブックで次のように語っている。
“近年、クマによる諸々のニュースが多くなっている中、当番組は根本的な問題提起になっている。現状のヒグマ対策であれば再度起こりえる事と憂慮する。行政・警察・猟友会の信頼関係をも含めて真剣に対処しなければ…今が、分岐点ではないか。
<その後の対話>
・その通りですね。消費者にできることは?(武田)
・クマ出没地域の住人、ハンター、行政は現実を直視した対策を立て、実行しようとしています。
しかし、それを悪しき事として反対している方々もいるのです。ともするとその声に行政が屈する傾向もあります。
無責任にクマを『殺すな・保護をしろ』の声に、それではクマの生息数はどれほどが適正かと聞くと、それには答えられない全
く無責任な方々なのです。そんな事をも理解していただき見守って欲しいと思います。(林氏)
・神奈川県のハンターナカムラアキ氏より
クマにとって、人間は恐ろしいものでなくてはいけません。
なめられたり、ましてや美味しい対象であってはなりません。