北海道の問題児はエゾシカだけではない。今度はクマだ。北海道本島から約20キロ離れた利尻島まで泳いで上陸。明治45年以来、106年ぶりの出来事だ。TVニュースからは、マラソン大会を目前に困惑した住民の様子が伺える。島には、クマを撃てるハンターがいないというのだ。クマを撃つことはシカを撃つことよりも難しいと聞いている。更に、本日(6/3)の新聞は、津別町、夕張市、浦河町、標津町、幌延町などの道路や山林でクマが目撃されたことを報じている。クマは本来、人を恐れる動物。畑の作物を狙う場合も人目を避けて夜間が多かった。ところが、近年は、「新世代ベア」などと呼ばれ、人を恐れないクマが増えている。
昨年11月。苫小牧市での旭山動物園長 坂東元氏の講演が頭をよぎる。
「明日の命の保証がない野生動物が危険な場所に自ら近づくことはない。しかし、最近ではこれが無くなった。人間が導いたのだ。人間と野生動物との関係は陣取り合戦でもある。相手の態度に応じ、動物たちは距離を縮めてくる。シカが増えれば熊の出没も増える。熊の食べる草をシカが食べてしまうからだ。熊はシカの子を食べている。食べるものさえあれば熊は冬眠しない。シカは通年でいるので、将来は大きな問題となるかも知れない。取り返しのつかない事態が忍び寄っていることに気付かなければならない…と。
「最近では、市街地にクマが頻繁に出てくる。カラスやスズメも侮れない」と語るのは、酪農学園大学の伊吾田宏正准教授。(当倶楽部主催の第2回エゾシカフェスタ)カラスが乳牛の乳房の太く浮き出た血管をつついて血を吸うこともある。出血多量で牛は死んでしまう。既に2頭のホルスタインが死んだ。また、スズメは牛舎に入りねぐらとすることもある。糞に含まれるサルモネラ菌は牛たちを危険にさらす恐れがある。
生態系の一員として、私たちも安閑としてはいられない。農被害ばかりか人身事故が危惧される。高齢かつ人口減少社会において、野生動物と人間はどう共生すべきなのか。動物たちの進入に押されて営農意欲を失った離農者が増加すれば、自給率221%(平成27年度概算値)を誇る北海道農業は衰退。国全体の食糧確保に大きな影響が出る。一方、動物たちは栄養豊かな耕作放棄地と雨露をしのげる空き家を手に入れることができ、豊富な餌は彼らの繁殖を手助けする。彼らとの陣取り合戦では、人間は間違いなく敗退するだろう。
交通網が次第に閉ざされ、若者が減っていく中で、野生の彼らに勝利する方途はあるのだろうか。この問いに、伊吾田准教授は、北海道に減少している狩猟者を増やすことが急務だと声を大にする。ご自身が主導する国内初の酪農学園大学狩猟管理学研究室には、ハンターを目指す若い学生たちが全国から集まってくる。未来の生態系の守り人だ。年間30名が狩猟免許を取得。しかし、銃の所持許可は警察の管轄であり、規制が多い。そのため、狩猟免許より銃を手にすることの方が困難だという。
「若者たちは野性動物対策に関する職につきたいと願っているが、いま現在、彼らを迎え入れる職場は殆どない。思うだに残念である。こうした技術や知識を身につけた若者たちを野生動物保護管理の現場で活用するシステムを整備できないものだろうか。彼らなくして、野生動物との共生の未来はないといっても過言ではないだろう。」
実現される日を私たちも願ってやまない。「野生動物との共生」を趣味の狩猟に頼っているだけでは限界があるのだ。
◆コメント(苫小牧市のハンターMさんより)
こんばんわ!エゾシカクラブHP見ました。内容が一部違うような感じがします 利尻には私が尊敬する中の1人、プロハンターがいます。利尻でただ1人、鹿、熊を取るハンターです。私と一緒に毎年苫小牧で鹿を獲ってます。おじいちゃんですが馬力が違います。電話して聞いたところ、撃って駆除は難しいそうです。山が笹で覆われているので追うのが困難です。罠を仕掛けるしかないと言ってましたよ。