永田吉則氏には、2015年にも講演頂いている。その際に、エゾシカは厄介者なのか?資源なのか?グローバルに考えてみなければならない。「そのままで貴重な資源」であれば道内はもとより道外・海外へ。「一ひねりすれば貴重な資源」なのであれば、「飼育」や「新商品開発」が大切。知人が経営するニュージーランドのシカ牧場では、EU・中国へ輸出していると語られた。
シカ肉の栄養価の高さに触れながら、単に「エゾシカ食べよう」と消費量の増加を呼びかけるだけではなく、「食育」の一分野としての昇華が必要。学校給食として、一般家庭におけるテーブルミートとして、親から子へとシカ肉を食べる習慣を代々受け継いでいく。それこそが「地域文化」だと話された。この言葉に私たちの活動の方向性の全てが凝縮されているように思う。
![グローバルな視点で北海道の魅力を語る永田社長](https://image.jimcdn.com/app/cms/image/transf/dimension=297x1024:format=jpg/path/sd776bcd33a72597d/image/ia8062f1a8089044e/version/1524983529/%E3%82%B0%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%90%E3%83%AB%E3%81%AA%E8%A6%96%E7%82%B9%E3%81%A7%E5%8C%97%E6%B5%B7%E9%81%93%E3%81%AE%E9%AD%85%E5%8A%9B%E3%82%92%E8%AA%9E%E3%82%8B%E6%B0%B8%E7%94%B0%E7%A4%BE%E9%95%B7.jpg)
北海道は「アジアの宝」
前回、今回のセミナーを通して、筆者が伝えたいことは、氏の北海道に対するグローバルな視点からの愛着と経済発展を見据えての貴重な提言である。人は遠くのモノはよく見えるが自分の目に一番近い所にある睫毛は見えない。私たちは、北海道に住みながら、その素晴らしさに気付いていないのではないか。
氏は知人である中国人の目を通して北海道の魅力に気付く。北海道は「アジアの宝」なのだと。最たるものは「食」の魅力。オホーツク海、太平洋、日本海という3つの大きな海に囲まれている地域は世界の何処にもない。
黒潮、親潮が混ざり合う北海道だからこそ、いつでも良質でいろいろな海産物を味わえる。当然ながら農畜産物も豊富である。北海道に大きな価値を見出している中国を始めとしたアジアの人々は現在、世界の約4割の富を有している。お金持ちは熱いところに住んでいるのだ。我々が冷たい、寒いと感じる雪も、一年中30度を超える日照りの中で暮らしている人々にとっては「COOL!」にすぎず、雪と温泉は魅力このうえないのだ。「食」のブランド化を考えるうえでインバウンドは見過ごせない。道民は、これらのことに気付かなければならない。
![CraftMAP -日本・世界の白地図-](https://image.jimcdn.com/app/cms/image/transf/none/path/sd776bcd33a72597d/image/i3a2ec0088a545ba9/version/1524983101/craftmap-%E6%97%A5%E6%9C%AC-%E4%B8%96%E7%95%8C%E3%81%AE%E7%99%BD%E5%9C%B0%E5%9B%B3.png)
北緯43度の肥沃な大地
札幌市は北緯43度の位置にある。北緯43度を西方向に辿ると中央アジア、地中海、イタリア北部、スペイン北部を通過。暖かな地域を通る。アメリカに入るとボストンなど東海岸、五大湖付近の寒冷地を横切る。此処は世界の穀倉地帯だ。
北緯43度は「発酵ライン」と呼ばれ、ブルガリアヨーグルト、
カスピ海ヨーグルト等、ヨーグルトやワイン、チーズが美味しい。また、ミュンヘン・札幌、・ミルウォーキーとのキャッチフレーズを使ったCMがあったように北緯43度のビールは美味しいのだ。ミルウォーキーは、アメリカとカナダの国境地帯。ここはアメリカ大穀倉地帯のど真ん中。北緯43度で発酵させるワイン、チーズ、納豆は、品質が良い。アジア観光地で43度ラインに位置するのは、北海道だけである。
横を見よう ~ブランド確立には連携必要 ~
北海道の人は、連携するという感覚が乏しいように思う。地域ブランド確立という大きな目的のためには生産者、加工業者、流通業者など業者間の連携が必要だ。小鳥のように農水省、国交省などの親鳥から餌が来るのを待っているだけではダメ。餌を持ってくる親鳥は、もういない。同じ巣の中にいるもの同志、上ばかり見ていないで横を見るべきだ。
現実を重視し、夢と希望を持ちながら、連携して立ち向かう覚悟と実行力があれば、エゾシカも納豆もこの北の大地も、必ずや大きな花を咲かせることができる筈だと結ばれた。 (武田)