12月1日。NHKテレビ朝のニュースで火打山(新潟県)のライチョウ絶滅の危機が報じられた。ライチョウは国の天然記念物。数年前、黒部を旅した時に立山室堂付近で出会っている。小さくて可憐な鳥だった。秋の保護色である茶褐色の羽毛を身にまとい、草叢に掘った穴から出たり入ったり。天敵から身を守るようにひっそりと動いていた。
一体、何があったのか?テレビの前から動けない。原因は暖冬による異変だと明かされた。火打山は標高2462メートルの高山。日本の高山帯は積雪量の多いことが特徴だ。だが、温暖化で積雪が減ってしまったことで、ここぞとばかり、平野部で数を増やし、過密化していたイノシシや二ホンジカが食草を求めて高山帯に移動、ライチョウの餌となる高山植物を食い荒らしたことが主因だという。気候温暖化は、繁殖力の強いイノシシやシカの増加を後押しする。しかも、植物の根や水を探して土を掘り起こす習性はイノシシもシカも同じ。ここまで条件が揃えば、あの小さなライチョウが叶うわけもない。いまや、お花畑は姿を消し、イネ科の植物に取って代わられた画像が寒々と映し出された。
これら高山帯に現れた侵入者の繁殖を抑える方策はないものか、ここ数年が勝負という言葉を残し、ニュースは終わった。
放送終了後、調べてみると二ホンジカによるライチョウ絶滅が取り沙汰されているのは、今に始まったことではなく、既に2005年頃から南アルプスなどでシカ増加の影響として危惧されていたことがわかった。
自然のバランスは1つ崩れると他の生き物全てが影響を受けていく。この変化に対応できる生物だけが生き残っていける。自然の摂理は冷厳なのか、あるいは合理的なのか。変化についていけない者は容赦なく切り捨てられる。人間とて例外ではない筈だ。自然の恵みにどっぷりと浸かりながら、生物たちを使い捨てにしている人間の未来を想う。自然がその力で人間を支えられなくなったとき、どんな形で人間に報いてくるのだろうか。
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たけだ (水曜日, 24 5月 2017 14:53)
とてもためになりました