タンチョウが人間から巣立つ日(7/29付 北海道新聞朝刊より)


タンチョウが人間から巣立つ日も近い。7/29の道新(朝刊)によれば、国はタンチョウへの給餌を将来終了する方針を打ち出したようだ。給餌は冬場の餌不足を補うため、1984年度から保護増殖事業として国により行われてきたもの。1952年度の生息数は僅かに33羽!絶滅の危機にさらされていた国の特別記念物タンチョウも手厚い保護の甲斐あってか、今では生息数1320羽を数えるという。生息地も分散され、釧路湿原などの道東だけではなく、日高、宗谷管内などでも営巣が確認されているとのこと。国は、「もう大丈夫」とツルたちを野生に戻す準備を始めたのだろう。今後は彼らを見守りつつ、段階的に給餌量を削減、自然界で餌を探す個体が増えるように仕向けていくようだ。


そもそも、野生動物とは厳しい自然環境のなかで、自分の力で餌を捕り、パートナーを見つけ、巣を作り、子どもを産み育てていくという自立した生き方ができる動物のこと。逞しいのだ。人が与える餌なしでは生きられない動物になってしまえば、もはや野生ではなくなってしまう。今回、道東以外の場でも営巣が確認されたことは、ツルたち自身が野生の本能を取り戻し、人による餌づけの場から分散していったと想像する。


更にこの日の記事には、釧路自然環境事務所の説明として「タンチョウは道内で個体数が2千羽に達すると飽和状態になるとみられ、農業被害の拡大も懸念される」とあった。動物が生息するうえでは、それぞれに、適正な密度というものがある。同じ動物がひしめき合って餌を奪い合いながら暮らすことは当事者にとって不幸なこと。餌にありつけなかった者が人里にさまよい出てくるのも無理はない。さて、この上はツルたちの一日も早い野生回帰を願うばかりだ。併せて野生動物全般について、その生態を尊重しつつ、距離を置いた付き合い方を学びたいものである。