5月15日のNHK「クローズアップ現代」は、八ヶ岳山麓で夜間、道路を舐め続けている数頭のシカを映し出していた。舐めていたのは、冬期間の道路凍結を防ぐために撒かれている塩化ナトリウム。食物を消化吸収するのに必要な塩分が不足するとシカは死に至るという。いわば、凍結防止剤がシカの栄養状態を改善し、生きる力を与えていたのだ。しかも、道路延長により散布量は必然的に多くなり、シカはますます元気を増し、個体数は増えていくという皮肉な図式。
南アルプスを覆っていた高山植物や草花はすべてシカに食べつくされ、いまや、八ヶ岳は丸坊主。地元では雨が降れば土地が流され、景観を楽しみに訪れていた観光客も減少するという経済的打撃さえ受けていた。