◇◆◆環境DNAと朱太川アユの話題について


 

~後志地域生物多様性協議会の活動報告(昨年度に引き続き)~


下の写真をよく見てください。この朱別川(後志地方)に、鮎が泳いでいるのが見えますか?

朱太川の写真
朱太川

え?一匹も見えないって?そういう貴方は正常です。

この写真では人間には見つけられません。

でも、我々人間は、たとえ肉眼でアユが見つけられなくても、水を調べただけでその川にアユがすんでいるかどうかが容易にわかるようになりました。

環境DNA解析という手法を用います。

 

 

 

 

 

 

話はかわりますが、我々北海道エゾシカ倶楽部は、増えすぎたエゾシカにより損なわれている生物多様性を取り戻すため、エゾシカの捕獲(有効利用)を呼び掛けています。

 

一方、現存している野生生物の保護や、外来種の防御等を行うことで生物多様性を守ろうとしている人たちもいます。後志地域生物多様性協議会はそのような取り組みをしている団体の一つです。

生物多様性を守ろうということでは、同協議会と我々は一致しています。

 

よって、本日は、同協議会事務局長の 高橋 興世さん(黒松内町企画環境課 上席主幹)をお招きし、昨年に引き続き同協会の活動状況について、特に進化した「環境DNA解析」についてお話を聞き、シカとは違った角度から生物多様性について勉強させていだだきました。概要は以下のとおりです。

 


講義中の髙橋事務局長の写真
講義中の髙橋事務局長

〇〇進化した環境DNA解析〇〇

 

・環境DNA解析とは、採取した水に含まれている魚等の体表の粘液や糞などとともに放出された「DNA」をデータベースと照合し、住んでいる生物について解析するものです。

約1リットルの水を採取・解析しただけで採取した場所にアユ等が住んでいるか、ほかにどんな生物がいるか、等が把握できるそうです。

 

同協議会は、「E‐水プロジェクト」という活動で平成28年度にこの手法を開発しました。しかし、昨年は精度がいま一つで、検出されないこともあったそうです。

 

それで、昨年から本年にかけて「ステリベクス」というプロセスを加える等改良を重ねて精度が向上させたそうです。これを受けて、本年度は後志地方に流れる各河川及び洞爺湖を対象でアユ、ザリガニ、その他水中生物について「環境DNA」解析の調査をしました。その結果以下のような結果が出たそうです


〇〇解析結果〇〇

解析結果は以下のとおりでした。

 

 ◆アユ

  • 後志地方を流れる10本の川と洞爺湖のうち、余別川・洞爺湖を除く9本の河川でアユのDNAを検出した。
  • 尻別川では、下流~中流にアユのDNAを検出したが、上流では検出できなかった。これは、中流にある古いダム(大正10年造)によってアユの遡上がふさがれていると想定される。

 ◆ザリガニ

  • 後志地方を流れる10本の川と洞爺湖のうち、大平川・朱太川・洞爺湖で在来種の日本ザリガニのDNAを検出した。洞爺湖では外来種であるウチダザリガニのDNAも確認した。

 ◆その他の生物

  余別川、尻別川、洞爺湖でどのような生物がいるかを確認した結果以下のような結果が得られた。

  • 余別川では、ヤマメ、シマウキゴリ等5種を確認した。
  • 尻別川ではイトウ、ヤマメ、ウグイ等16種を確認した。

〇〇今後の活動について〇〇

 今後は、以下の活動をしたいとのこと

  • アユのDNAが多くの河川で検出されたので、環境DNAを継続的に測定することでアユ資源量を把握し、後志のアユの資源管理と生息環境改善のための指標にしたい。
  • 日本ザリガニ及びウチダザリガニが検出されたので、条件を変えながら継続的に調査を行い、外来生物の侵入初期段階での防除マニュアル作成を検討したい。
  • 多種の魚類が検出されたので、各河川のさかな図鑑作成につなげたい(H28年より多くの魚を検出した)
  • 尻別川流域での分布の拡大を目指して、「オビラメの会」との協力を継続をする。 

〇〇今後の環境保全の礎に〇〇

  • 昨年の事業で作成した「朱太川水系の魚類」という図鑑を本日参加した会員全員にいただきました。現在朱太川に住んでいるすべての魚が掲載されてる本です。また、同図鑑を作成する際に、掲載している全ての魚の標本を保存したとのこと。
  • 今後もこれらの数の推移や新種の把握をすることによって、将来の同川の状況を把握し、環境対策を早めに打つことができるとのことでした。 

〇〇もしアユが減ると?〇〇

  • アユが綺麗な川にしか棲まないのは良く知られているところですが、もしアユが激減した場合、川の藻が増えて川の透明度が減る→光が差さないので植物プランクトンが減る→それを餌にしている生物が減る、という可能性があるとのことでした。
  • アユは一年魚で毎年寿命がつきるため、アユを餌としている鳥たちも減少するだろうとのこと。 

〇〇森への展開〇〇

  • このDNA解析」は、森の土を採取し、水に溶かすことで森の生物も把握が可能であるとのこと。
  • この方法を使って継続調査することで森の生物の多様性の把握がやりやすくなるかもしれないと感じました。 

〇〇日本一のアユをいつまでも〇〇

  • 朱太川のアユは、昨年の全国のアユを食べ比べする昨年の「清流めぐり利き鮎会」(高知県友釣連盟主催)で日本一となったそうです。

 

 (畠田 徹)


関連ページ

後志地域域生物多様性協議会(フェイスブック)

環境DNAを用いた生き物調査(2016年の調査報告)