◇◆◆エゾシカ増加がワシ達にもたらしたもの!

                ~獣医師・斎藤慶輔氏の熱き闘い~


◆◇エゾシカ猟増加がもたらした悲劇「鉛中毒」 


北海道新聞社発行
北海道新聞社発行

 

辛いことだが、この事実から目を背けるわけにはいかない。大なり小なり彼らに不幸をもたらしている原因には人間が係わっている。「鉛中毒」は、その最たるものだろう。真実をしっかりみつめ、私たちに多少でもできることがあれば、その解決に向けて全力で取り組むべきではないだろうか。その為には、まずは「知ること」だと気付かされた。 

北海道では、急増したエゾシカによる農・林業被害を軽減させるため、1998年より「エゾシカ保護管理計画」を実施、エゾシカ猟や駆除が積極的に行われるようになった。ところが、エゾシカ猟では一般的に鉛ライフル銃が使用されていたため、この施策が皮肉にも希少種であるオオワシの絶滅の危機を助長する結果となった。その経緯について、現場を知らない筆者に語る資格はない。先生の著書「野生の猛禽を診る」(北海道新聞社刊)から引用してお伝えする。(以下)


「狩猟で射止められたシカは通常その場で解体されるが、食用に適した部分が切り取られた後、残りの部位は山野に放置されることがほとんどだった。エゾシカの捕獲数が増加するに連れて、ハンターが猟場に残していったシカの死体(残滓ざんし)が、山野のあちこちで見られるようになった。さらに、撃たれたものの手負いの状態で逃げ、後に別の場所で死んだシカの死体も数多く存在し、鉛の汚染源になっていたと思われる。 

鉛弾の破片が数多く残っている被弾部は、皮膚に孔が開いて筋肉や内臓が露出しており、鳥類にとっては最も食べやすい。結果として、ワシは鉛弾の破片を含む部分を選んでついばむ傾向があることが、野外観察で明らかとなった。


音更町 田原氏撮影(複製厳禁)
音更町 田原氏撮影(複製厳禁)

ワシ類の鉛中毒の特徴として、繁殖年齢に達した成鳥が数多く犠牲になっていることが挙げられる。この傾向は、若いワシよりも生態的に優位な彼らが真っ先に新鮮なシカ肉を独占し、鉛を多く含む被弾部の肉を口にする機会がより多かったことが原因になっていると考えられる。自然界の中で生き残るすべを身に付けているはずの成鳥が、鉛によって数多く命を落としていることで、単に一羽の死亡のみならず、結果的この個体が生み出すはずだった次世代の減少にまで影響は波及するのだ。

さらに、鉛の摂取量が致死的でなかったにせよ、鉛の影響で危険を回避する能力が鈍り、交通事故などで二次的に死亡する者や、体に変調をきたし過酷な渡りに耐えられなかった者、繁殖機能に悪影響が出た者まで含めると、ワシの死因にどれほどの割合で鉛が関与しているのか、その深刻さは計り知れない。」

引用:P115 1行目~P116 9行目まで (原文のまま)

 


◇◆問題解決に向けて


齋藤先生と人生に一度のツーショット
齋藤先生と人生に一度のツーショット

道内では鉛弾を使用する猟法は、平成16年から禁止されてきた。更に平成26年、北海道は、新たに策定した「北海道エゾシカ対策推進条例」を施行。その中で、天然記念物のオオワシやオジロワシを鉛中毒から守るため、エゾシカ猟時における鉛弾の所持禁止にまで踏み込んだ。それでも尚、鉛中毒死するワシ達が絶えないという。理由は明白である。本州では鉛弾は合法だからだ。道外からやってくるハンター達に対して、取り締まりを行うことなどは不可能に近い。野性鳥類の鉛中毒を根絶するには、全国規模で全ての狩猟からの鉛弾を撤廃し、無毒の銅弾などに移行する以外に根本的な対策はないとのこと。問題解決には獣医としての限界があり、専門領域が繋がっていく必要がある。気が付いた人が世間に情報発信していくことが重要なのだと語られた。この言葉を重く受け止め、当倶楽部としても問題解決に向けて何らかの形でお手伝いができないか考えていきたい。

多くの方々に先生の著書をお読み頂ければと願う。

 

 猛禽類医学研究所 URL: http://www.irbj.net/ 


■2月22日。私たちはワシ達を救うために全国規模で鉛弾の使用禁止に向けて、声を上げるべく「署名運動」を開始した。


■5月4日。武田さん。素晴らしい活動ですね。我々の協力者にミラノ大学や他の国公立の教授や学生がいるので、猛禽類関係の研究関係

 者に伝えるよう話題の合間に画像を見せて話しています。(イタリア在住の玉田文明氏がFBに投稿してくださいました)


■8月26日。私が度々シェアをしている釧路の「猛禽類医学研究所」では、代表の齊藤慶輔獣医師を中心に傷ついた希少猛禽類たちを保護し、自然に返す活動をされています。齊藤医師が心を痛めるのは、エゾシカ猟が原因で国の天然記念物オオワシが鉛中毒になり、絶滅寸前の危機にあるということです。鉛弾は北海道では禁止されているものの本州以南ではOK。そこで「猛禽類医学研究所」は、ネットで署名を集め、全国での鉛弾中止を国に訴えていく所存です。必要とするのは10万人の署名。これを当該研究所のHPで知った私たち「北海道エゾシカ倶楽部」では、ネット環境にない人達にも応援頂こうと2月からコツコツと紙ベースでの署名活動を進めてきましたが、この程、400名を超えたので当該研究所に送付させていただきました。10万人署名の一助になればとの願いを込めて会員一人一人が自らの足で歩き回って集めたものです。取り組みの趣旨に賛同し署名して下さった道内各地412名の方々には心から感謝したいと思います。世界中の人が一度は見たいと憧れるオオワシの生息数は世界で僅か5000羽。その内、2500羽が道内で越冬します。生態系の頂点に位置するこの美しい鳥を地球上から葬り去るわけにはいきません。10万人署名には、あと5万人の署名が必要です。下記のHPから是非、署名をお願いいたします。(武田 FBへ投稿)

■2018.5.11

わたし達仲間で集めた署名543名分を環境省出先機関である北海道地方環境事務所に届け、環境大臣への提出をお願いしてきました。

三笠消費者協会の皆さまにもご協力いただきご、ありがとうございました。


       「全生命をかけて野生動物を救護する! 野の者は野へ返すために」~獣医師・斎藤慶輔氏の熱き闘い~⓵