北海道エゾシカ倶楽部の今年度の取り組み課題のひとつになっているシカの角を使った工芸品作りがいよいよ実現することになり、8月12日会場の札幌市立もみじ台中学校工作教室に集合しました。
定員調整のもと参加した会員は5名、前もって指示されたマスク、エプロンをし、やすりなどを手元にして造形的雰囲気が漂う教室を見渡すと初めての体験に期待感が高まります。ご指導頂いたのは同校美術担当の先生で道内でのエゾシカ関連事業活動でご活躍されている宮崎亨先生。アシスタントとして、わが倶楽部期待の星・酪農学園大学学生の大森希美さんが参加しました。
さて、全員初めての工作体験でしたが教室には既に用意して頂いた材料の角、使用する工具などの説明と作品作りへのレクチャーがあり、参加者は各自思い思いの作品を目指して早速工作に取りかかりました。
では、私が実践した作品の完成までの流れをご紹介しましょう。
① デザインと材料選び
自分が作りたい作品と合いそうな角の材料を選びデザインのイメージを作ります。
角の材料は既に大小5cm~20c程に切断されているものや角度ある部位の中から選びますが、私は用意された材料の長さをみて「角度もなく縦に切断さえうまくいけば出来そう」と思われた長さ12cm前後で太さ2cm位の角を2本選びました。
② 加工
いよいよ加工ですが、電動のこぎりを使って角を縦に切るという作業に挑戦しました。“初めて触る電動のこぎり”ということで大森さんの全面的応援の下、台上に角を置き上下をしっかり指で押さえスイッチオン、角をゆっくり押しながら前進させ切り進めると数分で終了しました。とはいうものの、この作業を出来るだけ多数、薄く出来上がるよう何回も繰り返すという作業は、強固な角を縦に切断する大変力のいるもので初心者である私には無理と感じたので予定を変え回数を変更することにしました。
また、角の形状の凸凹のあるものは素人には固定が難しく、かつ、骨粉が手につくので一時はいていた軍手は、むしろ危険と判断して着用をやめました。
理由は角の材料が機械の振動に負けて飛びはねそうになり、指先と材料との一体感の感触を直に感じながら素手で取り組むのが適切であると実感したためです。
また、電動を使わない場合は「万力」で固定して糸鋸で切ることになりますが長さのあるものは不向きかも知れません。
こうして出来た合計7本の材料のつなぎ目の穴を上下にあける作業をドリルを使って行っていたところ、ふと気が付くといつのまにか傍に心配そうに見つめる先生がいらっしゃいました。
この強固な素材には形状に応じたドリル操作のコツがあり、ある程度の経験が必要であることが解ると成程と、納得できる先生のまなざしでありました。
③ 仕上げ
「②加工」の過程で材料にきれいに穴があいたので、この穴に紐を通してつなぎます。
角はカドが鋭利であるためつなぎの紐が切れてしまうこともあるということで、棒やすりを使って研磨し工作は終了です。
④ 完成
「③仕上げ」を終了した工作物のパーツを細いプラスチック紐で繋ぎ風鈴らしく形を整えて作業は終了しました。
⑤ その後
完成した自作の風鈴は、涼やかな風鈴とはおおよそ趣は異なりますが、圧倒的存在感を放ちながら今、庭にある桜の樹の一枝に吊るされ時折強い風に吹かれて“カチッ”と骨琴独特の固い音を響かせています。この角が落ち角であったのか、撃たれた鹿の角であったのか私は知りません。
しかし、かって仲間と共に北海道の野山を自由に疾走し、時には戦いの武器として雄々しく生きた証でありました。 大きく立派な角を頂き、凛々しくも美しい北海道を代表するエゾシカの姿、そのエゾシカの勇姿を想って間もなく晩秋を迎える風鈴を見つめています。
公益社団法人 札幌消費者協会「北海道エゾシカ倶楽部」 代表 武田佳世子
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