◆◇◆シカ皮の有効利用に向けて


 

2015910日。道は2014年度のエゾシカ推定生息数が前年度比6万頭減の48万頭になったと発表。捕獲数は13.6万頭。その内、食肉として道内外に流通しているのは約16%程度。60%がハンターの自家消費。捕獲されたシカ達の3割近くは未利用のまま棄て去られている。

 

2014年4月に施行された「北海道エゾシカ対策推進条例」は、エゾシカを道民の共有財産として食や観光などへの有効活用を謳う。

 シカ皮は柔らかく、しなやか、洗える、丈夫、通気性がよく乾きが早いなどの優れた特性をもつ。この柔軟性や吸水性を生かし、これ

までにも、紐類、手袋や財布、剣道具などに加工され、メガネ拭きや貴金属の汚れ落としても愛用されてきた。パソコンの液晶画面を

拭くのにも適している。言うことなしの優れモノだが、現在、原皮の流通は3%程度。(道経済部2011年 エゾシカ活用実態調査)。

 

ネックとなるのは道内に皮を鞣す工場が無いことだ。製品化を進める事業者は道外に鞣しを依頼しなければならないが、その際にかかる

手間とコストは相当なもの。鞣し依頼は100枚単位。受け入れ側にしてみると商売が成り立つには、千枚単位、万枚単位が必要という

事情もあると聞く。

 

このニーズに応えるには、原皮の安定供給が課題。100枚集めるのも容易なことではない筈だ。しかも野生獣であるために、品質にばらつきが多いことも事実。 シカの皮面積は小さい。アチコチに銃弾の跡や傷が残るようでは、製品利用は限られる。

 

シカ皮利用の課題の第一は、原皮を如何に集められるかという出発点にありそうだ。この点について、専門家の回答は単純明快。シカ肉の流通拡大が先決だという。皮は肉に付いているもの。肉の流通量が増えれば自ずと皮も回収できるというのがその理由。重要なのは、良質な肉や皮の確保にはハンターの射撃技術の向上が必要とのこと。肉の美味しさも美しい皮も全てはハンターの腕次第。ハンターに、良質な資源供給元としての社会的役割を担ってもらうしかない。

 

実は、自家消費しているハンターの多くが食肉処理施設での買取りを望んでいる。だが、施設の全体数が少ないこと、土日や休日は稼働していないなどの理由から、やむなくペットの餌にしたり、隣近所に配ったりしているのが現状のようだ。食肉処理施設側も捕獲個体の殆どを施設で処理することが重要だと考えてはいるが、資金不足らしく、設備投資や運営面に公的補助を求めている。(前出:道経済部調査資料)

 

まずは、この辺りのミスマッチを解消したいもの。 何はともあれエゾシカブランド形成とい北海道の夢は一重にハンターの肩にかかっている。彼らなしには達成できない。ハンターの減少と高齢化に歯止めをかけたいものである。  



                            資料:環境省