複製の土器とシカの革の組み合わせの「縄文太鼓」、木をくり抜いた器とヤギの皮でつくられる太鼓「ジャンベ」。
今日はその珍しい、2つの太鼓の演奏が聴けて、さらに、太鼓を叩く体験まで出来るという貴重なイベントを当倶楽部が主催しました。
増えすぎて、駆除せざるを得ないエゾシカですが、ただ殺されて捨てられるのでは、エゾシカにあまりに申し訳ない。せめて有効利用を促進しよう。その観点からも、エゾシカの革が楽器に利用されている「縄文太鼓」はマッチしていて、ぜひ、沢山の人に知って欲しいと企画したものです。
よく似た楽器、西アフリカの民族楽器の「ジャンベ」も用意されていました。
ジャンベが縄文太鼓と違うのは、焼き物でなく、木(今回のは、イロコと呼ばれるクワ科の木でした)をくり抜いて作った土台であることと、エゾシカでなくヤギの皮だという点です。
同じなのは、バチなどは使わず手で叩いて演奏すること。そして、皮をビョウなどで留めず、紐で結んであること。 形状や皮のテンションによって、独自の音を奏でることができるのでしょう。
イベントは、縄文太鼓の演奏から始まりました。演奏者は4人。
さすがプロの演奏は聞き応えがあり、奏でられる太鼓の音はズシンズシンと心に響いてきます。でも、それだけではない、他の楽器とは、何か違うパワーも伝わってきます。
まだ北海道とも名付けられていなかった頃、厳しい自然の中で、狼が、エゾシカが、他のたくさんの動物達が、種の命をつなぐたたかいをしていた原始の森の息吹が感じられる空間に誘われました。
「なんの使命も持たずにこの世に降りてきた命は1つもない」
アイヌの方々には、そう言い伝えがあると、去年、縄文太鼓の演奏者に教えていただきました。
肉体は滅びたエゾシカの、しかし、この世に皮を遺し、人の手を経て生まれ変わった姿。
そしてそこから生み出される「音楽」。
縄文太鼓に姿を変えたエゾシカが、私たちに伝えてくれるメッセージに耳をそばだてた時間がすぎて行きました。
続いて、縄文太鼓を体験演奏させていただきました。
60年ごとに行われる出雲大社での「平成の大遷宮」にて奉祝奉納演奏をされたという高貴な「縄文太鼓」に実際に手を触れられるなんて、めったにできる体験ではありません。
この演奏体験、驚きました!!
ただ、下手くそな私が手で太鼓を叩いているだけなのに、とってもとっても楽しいのです!
8人で合わせるともっと楽しいのです。
虎は死して皮を残す。人は死して名を残す…そんな言葉を昔、聞いたことがありました。何も残せそうもない私。
沢山の命をいただきながら、生かしてもらっている私。
さらに、今日は、名もないシカが残してくれた革と、人間が織りなす音楽に触れることができました。
縄文太鼓演奏家の 澤口・石田・佐藤・石橋 の皆さんに感謝です。ありがとうございました。
演奏家の皆さんは、これから、演奏会や、縄文太鼓の製作体験などのイベントが企画されているそうです。
命のつながりについて、自然と人間の関わりについて考えるのもよし、純粋に楽しむのもよし。
ぜひ、沢山の皆さんに縄文太鼓を知っていただけたら、と思います。 (記:森 裕子)
エゾシカの革は伸びるのですか?
言葉の表現を変えますと、柔軟性があるということ。さらに強度にも富んでいます。なぜなら、冬の厳しい季節を乗り越えなければならない為、食糧を体内に蓄えるからです。それを怠れば生命にかかわる事。お腹の皮が柔軟であるからこそ。冬の間の食料を貯めることが出来るのです。
エゾシカは、3月~8月に沢山採食し、9月~11月になる頃には体重がピークになります。
下記文面は、西興部村猟区管理協会様の調査研究記事から抜粋していますが、
「ある年の10月に捕獲されたエゾシカの雌は、体重が102kgもあり、お尻の皮下脂肪は5cmもあった」との事です。それだけ11~5月の半年間はエゾシカにとってみれば食糧不足の期間であり、餓死をしてしまいかねない時期なのです。
②縄文太鼓の打面革について。
私達の使用しているエゾシカの革は、白なめしという技法を用いた革であり、自然の白さを醸し、自然と対峙しながら、合成・化学薬品を一切使用しない鞣し革を太鼓の打面に張っております。
この白なめしという技法は、製革作業は分業制だったため、全行程を正確に覚えている人がおらず、継承者の僅かな情報を頼りに、試行錯誤を繰り返しながら理想の白さを求めて製革に取り組まれています。私達は製革者の方を尊敬し敬愛し、そして感謝の気持ちを忘れずに日々、音を通じて活動させて頂いております。
これから私達も更にエゾシカと対峙し、知識と共に音の向上を高め皆様に感動と共鳴音を感じて頂けるよう精進して参ります。
( ジ ャンベ・縄文太鼓演奏家 澤口 勝 )
公益社団法人 札幌消費者協会「北海道エゾシカ倶楽部」 代表 武田佳世子
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