5月30日の定例会では、北海道はまなす食品株式会社 代表取締役社長の永田吉則様を講師に迎え、エゾシカ缶詰を利用した料理、納豆料理を楽しみながら「エゾシカと納豆」について、お話を頂きました。調理は全員参加。当日のおおよその内容を再現します。
日本は既に「人口減少時代」に入っているが、北海道への影響はより大きい。2014.9.24「国立社会保障・人口問題研究所」推計発表によれば、2030年までに、人口減少が大きい都市worst10において①小樽24%減 ③函館20%減 ⑦釧路18%減という状況である。 高橋知事の最大の課題は、まさに「人口減少対策」だと言っていい。一方、北海道の食・景観について中国の人たちは「アジアの宝」だと讃嘆する。中国では既に常識となっている。 中国人100人に聞くと、100人とも「北海道を知っている」というほど有名で人気がある。
1、北海道は憧れの地
その理由の一つに、露天風呂の素晴らしさ、清潔さがある。内モンゴルや広州では、露天風呂は主に自室に風呂のない肉体労働者が入るもので、汚いといったイメージがあるが、日本では女優さんが入っている。まず、このことに驚くのだ。次に、カニ、ホタテ料理の美味しさ。道東で撮影された映画「狙った恋の落とし穴」(フェイチェイウーラル)は、中国総人口15億人の内4億人が見たという。
日本の入場者数歴代一位の「千と千尋の神隠し」でさえ、日本の総人口1億2千万人の内、2千万人しか見ていない。1/6だ。何が彼らをそうさせたのか。映画に映る道東の風景の美しさである。道路がアップアンドダウンを繰り返し、車が見えては、すぐ又、見えなくなり…これを繰り返すのが特に素晴らしく見えるらしい。中国国内にこういう地形は無いという。
2、北海道の豊富な食材は世界一 「三海」の珍味
何が世界一なのかというと、食材の豊富さにある。太平洋・日本海・オホーツク海という3つの大海に囲まれている地域は北海道のみ。他にはない。黒潮、親潮が混ざり合う北海道は、海産物の豊富さにおいて胸を張っていい。
EX:「うに」の旬 小樽は7月、これに対し、網走は冬が旬なのだ。観光客は、一年中、旬の「うに」を食べることが出来る
北海道の米も、最近特に美味しくなった。野菜も、殆どの種類が揃っている。果物で無いのは、柑橘系くらいだろう。きのこが豊富にあるというのも、実は大変貴重なこと。日本わさびは、美瑛町で自生している。登別のフジサキ農園にも…。しょうがは、高知県が圧倒的な強さを誇るが、釧路でも作っている。
3、北緯43度は世界的に見ても「美味しい」地帯
北緯43度は「発酵ライン」と呼ばれ、ヨーグルト、ワイン、チーズが美味しい。ビールは、札幌、ミュンヘン、ミルウオーキー。ミルウオーキーは、アメリカとカナダの国境地帯。ここはアメリカ大穀倉地帯のど真ん中だ。北緯43度で発酵させる、ワイン、チーズ、納豆は、品質が良い。アジア観光地で43度ラインに位置するのは、北海道だけである。
4、北海道物産展の盛況
全国のデパートで行われる「北海道物産展」は、ものすごい集客力がある。売り上げは、断トツの1位だ。2位の「京都物産展」と比べて、倍近くある。年に3回近く行うデパートも少なくない。特に年末は、おせち料理のシーズンで、おせちはご存知のように一つの産地では、作れなくなっている(出来あいのおせち料理セットを買う人は除く)。そんな時期に、一地域の物産展を開催するのは、常識では考えられないことだ。ためしに本州のデパートの年末に開催されている「北海道大物産展」を覗いてみては如何か。大盛況の筈だ。東アジアでも「「北海道物産展」は大ブレークしている。テレビ東京「未来世紀ジパング」でも特集された通りである。
5、観光
アジアの人口は30億人だが、いま驚異の経済発展を遂げている。
世界経済成長率ランキング 日本は1.5% 138位。アジアでは実に22ヶ国が、日本を上回る発展を遂げている。逆に日本を下回っているのは、北朝鮮くらいのもの。それほど凄いものがある。1人当たりのGDPが4,000ドル台の後半になると、海外旅行に火がつくというのは旅行業界の常識である。
北海道の周りは「潜在観光客でいっぱい」なのだ。
ちなみに、タイは一人当たりGDPが5,600ドルになった。タイのバンコクから札幌1週間の滞在(航空券+ホテル)で約10万円だ。かたや、札幌から九州1週間の旅行で20数万円のものもある。
インドネシア 3,500ドル。もう少しで4,000ドルだ。インドネシアの人口は、2億6千万人。そこにLCCの進出で、安い航空券チケットが出回り出した。これからブレークするだろう。LCCは、まさに北海道のためにあると言っていいだろう。今後は空港の「体制整備」「活性化」をどう作るかが課題となる。
さて、来道する外国人の数はどうか。この10年間で、釧路管内の人口は3万人減った。しかし、釧路管内を訪れる外国人は、4~5倍も増えているのだ。
❶「道の駅ツアー」
アイデア勝負だ。「目」で楽しみ、そして、重点はやはり「食」だ。中国国内にはチベットがある。そのせいか北海道の自然より
も、やはり食に魅力を感じる観光客が多い。北海道の基本は「食べ物」来道する人の7割は「食」が目当てだ。
❷「ガーデン街道」
上野ガーデンはぜひ一度見ておくべきだ。訪れているのは道外の人が多く、道内の人は
ほとんど見かけない。今は中国人が大半である。
➌ 北海道の過疎化に関して
適正な人数の人々が住んでこその「北海道」だ。そこへ向けて、みんなが努力すべし。札幌でさえ、区によっては、消滅可能性あり
だ。
6、エゾシカに関する一考察
エゾシカは厄介者なのか?資源なのか?グローバルに考えてみなければならない。「そのままで貴重な資源」であれば道 内はもとより道外・海外へ。「一ひねりすれば貴重な資源」なのであれば、「飼育」や「新商品開発」が大切。ニュージーランドのシカ牧場では、EU・中国へ輸出している。
白糠町では、エゾシカドリンクを生産している。1本700円だ。美味しくないので、日本ではあまり売れない。ただ、漢方薬として、中国では売れているそうだ。シカ肉は、輸出禁止だ。そこで、ひと工夫した。エキスの段階にまで加工すると輸出可能となるので、ドリンクにして、見事に成功した。
黙って何もしなかったら、いつまでたっても海外市場に出せない。ひとひねりすると、可能になる。
このひとひねりを考えるのは、消費者協会ではなく、我々企業の責務だと思う。
エゾシカ肉を扱っている店は、全道で15店舗。品質の良いエゾシカ肉を手に入れるのは、難しい。
昨年度あたりから、エゾシカの頭数は少し減ってきた。それでも、56万頭もいる。被害防止の観点からすると、まだまだ多すぎる。
国民の幸福度№1の国ブータンでも、幸せよりも経済成長が優先されつつある。 所得が増えたので、みんなネットで、どんどん買い物をしている。密教の国ではあるが、とにかく経済成長はすごい勢いだ。動物の殺生は禁止されているが、殺生後きちんと拝めば、許されるという理屈で、釣り堀場もできはじめた。
我々も、エゾシカという一つの命を、人間の都合で奪う。命を奪ったことへの免罪。それが有効活用だと思うが、有効活用をどう考えるかは、とても重要である。もちろん伝染病などの場合は例外だ。
エゾシカは厄介者だが、末永く付き合わなければならない。ひとつの命が助かると、もうひとつの命の方は散ることもある。必要数だけ、間引くことだ。そして、それをいつまでも続けることだ。
シカに教育しても、わからないから、そうであるならば、地域の中で、殺す人(ハンター)、拝む人、有効活用する人、消費する人・・・・ひとつのシステムを作っていくことが、重要だ。商売は、その延長線上にある。
EX. 小さいころから、学校給食などを通して、エゾシカ肉を食べさせる。ジビエは、ひとつの文化である。 日本の競馬は世界の中でなかなか一流になれない。イギリスが一流なのは、小さいころから乗馬に親しみ、競馬と乗馬がイギリスの文化になっているからだ。
7、因習に囚われない新しい文化の創造が北海道の未来を開く
因習にとらわれないことが大事である。変えられないものは、伝統ではなく、因習だ。西日本の文化は、一種の因習である。北海道には、幸いなことに「昔からの文化」、といったものがない。新しいことをやるには、最適である。エゾシカも新しい取り組みだ。しかし、一部の業者しか美味しい肉は生産できないのが実情。道庁もこれまであまり取り組んでこなかった。
外交交渉では、まず交渉に当たる個人のレベルで、双方の信頼関係を築くことだ。(基本中の基本)
EX. 田中角栄と周恩来の、国交回復正常化交渉のひとこま
田中首相は交渉の中で、次のようなたとえ話を用いた。「提灯は行燈、行燈は提灯」。部屋に置くと行燈(あんどん)、これを持って
歩くと提灯(ちょうちん)になる。このように、中国と日本は同じ言葉(漢字)を使っているが、微妙に違っているということを、この
たとえ話で表現したかったとされる。
EX. 納豆も、豆を発酵させたもの。豆の煮汁を箱に収めたものが豆腐。同じ豆だが、違いがある。
企業経営者は、消費者運動には勝てない。私と同じ世代の女性は、学校を卒業しても、就職口がなかったので、消費者運動に走った。彼女らは大変に優秀である。
私が職場の採用担当者だった頃も、女性の方が遥かに優秀な感じがした。女性大統領なのは、フィリピン、パキスタン、インド、ドイツなど。アメリカも民主党からの次期大統領立候補予定者は、女性(クリントン)だ。アイスランドで、リーマンショックの対応が遅れたことに関し、調査団を作った。
その報告書に書かれていた原因の一つに、3大銀行の頭取が全員男性だったからと、書かれているそうだ。そういうことからか、今では3大銀行の内、二つの銀行の頭取が女性である。
消費者運動も、批判をすることに主体が置かれていたが、今では、消費者の皆さんの意見を取り入れながら、何かを作っていくことに、主体が移ってきていると思う。我々企業は、商品を作ってはいるが、消費者のプロではない。プロの消費者は、お客様たちだ。消費者協会も、何かを作っていくことが主体である。
エゾシカも、ひとつの文化、運動ととらえるべきだ。
●納豆のネバネバについて、何とかならないか?
ネバネバの少ない菌を、茨城工業試験場で、研究している。納豆をフリーズドライにしたりして、食べ方を別の方法にするやり方もある。たとえば、納豆を微粉化(パウダー化)すると、ネバネバが消え、においもなくなる。しかし、納豆菌は活きている。
●さくら納豆の味付けについて
さくらもちの塩漬けの葉っぱを、水あめの中につけると、香りだけが水あめにうつる。それを使う。
*今日の調理実習では、「さくら納豆」を使い、会員の創意工夫で「納豆入りドーナツ」「納豆入り冷やしラーメン」などが披露されました。勿論、味はバッチリでした。
●煮方について
自社では、温度に気を付けている。大きな豆は、水を吸うのが遅いので、難しい。
●医薬品と食品の違いは?
医薬品は、入っている成分が極めて限られている。医薬品は人工的に
作っているので、成分量は限られている。認可の段階で全部わかっていな
いと、流通させることはできない。食品は、例えば豆腐ひとつとっても、
いまだに何が入っているか、それがどういう効能があるのか、完全には分
かっていない。
●最近では、食品が原因の様々な病気が出てきているが原因は何か
戦後、西洋料理が入ってきて、食事が急激に和食から洋風に変化して行った。しかし、現代の私達は、先祖代々(10世代前から)組み込まれた遺伝子を体に持っている。 食べても大丈夫という物を、実際に体に取り入れ、それが血となり肉となっていったわけで、これは食べて大丈夫」という情報が、遺伝子レベルにまで組み込まれている。
人間の体はどんな食品を食べても、多かれ少なかれストレスを感じるが、戦後洋風の食べ物に急激にシフトし、この想定外の出来ごとに体が変化しきれず、ストレスを多く感じるようになった。過大なストレスは免疫の低下を招き、それが、諸病を招いている。小腸の長さも、日本人が6mなのに対し、白人は4mであり、2mも差がある。これは、豆、穀物を中心に日本人の体が、出来ているからだ。
●納豆の研究
東大が一番熱心だ。それでも本格的にやりはじめたの
はここ5年くらいなもの。北大は全くやっていない。
有効栄養素:納豆キナーゼ、ビタミンK2、ポリアミン等。納豆の研究は、まだまだ発展途上だ。
●ひきわり納豆について
ひきわりは、消化に良い。しかし、自分で切ってひきわり風にしたほうが美味しい。
●一日の摂取量
一日5ヶまでなら、食べても全く問題ない。しかし、毎日毎日何個も食べるのも現実的ではないので、土日に多めに食べるとか、
工夫してはどうか。
●食べ方の工夫
乳酸菌と一緒に取ると良い。乳酸菌が納豆菌をエサにして10倍に増える。このことが、腸内フローラを改善し、免疫力のアップに最
大の効果があるといわれるゆえんだ。ライラック乳酸菌(旭川)はよい。おなかのポッコリがとれる。
「ヘルシードゥ」も取得。(永田氏も毎日愛飲している)。
関西(特に神戸)では、納豆を学校給食に積極的に取り入れているところがある。管理栄養食(病院など)としても、最近注目され
だしている。子どもの時から納豆を積極的に取ると、更年期障害など様々な病気が起きにくく、起きても弱い出方で済むようだ。白
ワインと納豆は合うようだ。納豆のレシピはどこの本屋にも置いてある。
●製品化
スティック化して、サラダにかけると美味しい。野菜の水分に当たると、くっついて下に落ちない。オイ ルドレッシングだと、下に
ほとんど落ちてしまう。醤油も食べている量の半分は下に落ちている。
*推薦番組 NHK特集「腸内フローラ」 近年稀にみるすごい番組!機会があれば是非見るべし。
(棚川伊知郎)
公益社団法人 札幌消費者協会「北海道エゾシカ倶楽部」 代表 武田佳世子
060-0808 札幌市北8条西3丁目 札幌エルプラザ2階
TEL :011-728-8300 / FAX 011-728-8301 E-mail:ezoshika_club@yahoo.co.jp