2月25日(水)に、北海道が主催する「まちづくり推進条例セミナー」において、「西興部村猟区におけるエゾシカ地域管理の取組み」と題し、道内自治体職員による満席の聴衆の中、NPO法人西興部村猟区管理協会 事務局長の伊吾田順平氏から事例発表がありました。伊吾田氏は、これから狩猟を始めようとする狩猟者の育成を目的として、基礎的な知識や技術から実践的な狩猟方法まで学ぶことが出来るハンティングスクールや、エゾシカの多様な魅力を体験できるエゾシカツアーなどの講師を務められるとともに、自身もハンターとして、エゾシカを地域の自然資源として位置づけ、有効活用のために様々な活動を実践されている方です。
北海道には、現在エゾシカが60万頭近く生息しており、この爆発的に急増により60億円を超える(H23)農林業被害や、樹皮食いなどによる自然植生の破壊や車との衝突事故などをもたらし、地元住民にとって深刻な問題となっています。
これらの対策として、狩猟によるエゾシカの個体数管理が行われておりますが、ハンター数が不足しており目標の数値に達していない状況のようです。
そこで西興部村では、このような深刻な被害対策を村の住民と共に考え、平成16年より地元住民合意のもと村全体を鳥獣保護法上の「猟区」として設定し、その区域で狩猟するハンターに対して、管理者が区域オリジナルのルールを設け、エゾシカを村の資源として活用する試みが始まりました。
この猟区で行っている事業は、
① この猟区は、西興部村猟区管協会により管理運営され、有料で入場した狩猟希望者は、安全なガイド付きの「ハンティングツアー」が楽しめる。
② 狩猟初心者や興味のある人たちには、「ハンティングスクール」として猟区において、獲物の探索・解体・料理の体験と、それらに関する講義を聞くことができる。
③ 地元教育委員と協働して小学生を対象に、「環境教育事業」として猟区内の自然に親しみながら、シカやクマなどの野生動物に関する教育活動を行っている。
④ 猟区内での野生動物の生態などの「調査研究」、シカの皮による革製品や角の加工品など「地元工芸品」への有効活用。
特に「ガイド付きハンティングツアー」に関しては、本州からのツアー客が9割以上を占め、猟区への入場料、ガイド料や狩猟前のセミナー受講料の他に、ホテル宿泊料や狩猟したエゾシカを処理工場で食肉にする解体手数料など、地元にお金が落ちるシステムになっており、小規模な自治体としては、一定の経済効果を生んでいるとのことです。
また新たな試みとして、狩猟された動物を安心して市場に流通できる施設として、認証制度による厳しい衛生基準をクリアした「食肉解体工場」の建設や、ハンティングツアー客のための練習施設として「ライフル射撃場」も現在建設中であり、エゾシカという地域資源の活用拡大にも努めています。
その一方では、現在道内では14万頭ものエゾシカが狩猟されているにもかかわらず、その大部分が廃棄されているが現状であり、これらを有効活用させるためには西興部村として更にどのような取り組みができるか。また狩猟期間外の閑散期にも継続可能な産業としてエゾシカ資源を活用できる方法を現在模索しているなどの問題提起もあり、数々の先進的な取り組みを住民ととも考え推し進めている姿が感じ取られる、とても意義深い講演でした。
公益社団法人 札幌消費者協会「北海道エゾシカ倶楽部」 代表 武田佳世子
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