「エゾシカフェスタin札幌」の会場風景(10月8日午前、ホテルライフォート札幌で)。写真は標茶高等学校の学生による活動報告
増え続けるエゾシカの有効活用を考えるフォーラム「エゾシカフェスタin札幌」が、北海道消費者協会などの主催で10月8日、札幌市中央区のホテルライフォート札幌で開催された。エゾシカ革を張った北海道独自の楽器「縄文太鼓」の演奏会から始まった同イベントには約200人が集まり、ランチタイムにはエゾシカ肉料理のランチも振る舞われた。
オープニングを飾った縄文太鼓の演奏会。最後の楽曲はエゾシカの面をかぶって演奏された
「エゾシカと共存する社会の姿」をテーマにした有識者による基調講演や、エゾシカの有効活用について研究している学生の活動発表、「エゾシカの有効活用の現状と課題」を論じ合ったパネルディスカッションなど、エゾシカと人との関わり方についてさまざまな提言がなされた同イベント。
基調講演で講師を務めたエゾシカ協会会長で北大名誉教授の近藤誠司農学博士は、「人間が太古の狩猟時代に一番多く獲っていたのはシカ。それ以降も人間はシカを食用や革を取るなどの目的で利用し続けてきたのに、ほとんど家畜化されていないんです」など人類の狩猟の歴史を紐解きながらこれまでのシカとの関わりを語ったほか、「シカは元々雪に弱い生き物で、大雪の度に頭数を大きく減らしてきた歴史もあります。ですが、今の北海道では針葉樹林の広がりなど大雪でも生存できる環境が広がったことも、増える原因になっているのでしょう」とも話した。そして「エゾシカを食べて生態系を守りましょう」と結んだ。
基調講演で講師を務めた、エゾシカ協会会長の近藤誠司農学博士
続く学生の活動発表では、北海道教育大学釧路校と北海道標茶高等学校の学生がそれぞれ登壇。このうち、革小物の販促を通じたエゾシカの有効活用について発表した標茶高等学校3年生の倉内渚さんに登壇後話を伺うと、
「この活動前はエゾシカの生態や問題をあまり知らず、地元ではシカによる交通事故も多いので、あまり良いイメージはありませんでした」
と率直な心境を述べた上で、
「でもこの活動を始めて、エゾシカは食材や革製品などいろいろなことに有効活用できることを勉強しました。ですが同時に、そういう無駄のない使われ方をされているのは、ほんの一部ということも知りました。それはとても勿体ないことだし、シカも生き物なので、駆除した後もその命は大切に使った方が良いと思います」と話した。
また、パネルディスカッションで論客のひとりを務めたエゾシカ革製品を製造するエゾプロダクト(本社札幌)の菊地隆代表は「素材として調達する際、傷のあるものが多いというのが現在の課題ではありますが、そもそもシカの革を捨てているのは日本くらい。海外では一流ブランドがシカ革を高級素材として使っていますからね」と話している。
頭数削減が急務となるほど増えすぎたエゾシカ。これを北海道ならではの豊富な地域資源と捉え、今後より一層有効活用していく動きが進むことに期待したい。
公益社団法人 札幌消費者協会「北海道エゾシカ倶楽部」 代表 武田佳世子
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