伊吾田准教授のお話によると、シカ、イノシシによる農作物被害は年間200億円に上る。一方で、頼りとなるハンターは3分の2が60歳以上。実にハンターこそ「絶滅危惧種」だとか。一方で、林業に興味を持つ学生、女性が増えている。国内初の酪農学園大学狩猟管理学研究室には、これらの若い学生たちが集まってくる。未来の生態系の守り人だ。年間30名が狩猟免許を取得。しかし、銃の所持許可は警察の管轄であり、規制が多い。そのため、狩猟免許より銃を手にすることの方が困難だという。
街中に出没するシカ(アーバンディア)は、民家の庭の木を食べる。たとえばオンコの木などは皮をはがされると忽ち枯れてしまう。北海道の場合、冬は雪が多く、シカたちの食べ物(草花)が少なくなるためだ。雪ノ下の笹は青いので、雪を掘ってでも食べる。ハルニレなどの広葉樹が好物。ぐるりと皮を剥かれれば根から水分を摂取できなくなり、木の葉が落ち、やがて枯れていく。
ことはエゾシカ問題にとどまらない。最近では、市街地にクマが頻繁に出てくる。カラスやスズメも侮れない。カラスが乳牛の乳房の太く浮き出た血管をつついて血を吸うこともある。出血多量で牛は死んでしまう。既に2頭のホルスタインが死んだ。また、スズメは牛舎に入りねぐらとすることもある。糞に含まれるサルモネラ菌は牛たちを危険にさらす。
現在、伊吾田准教授の研究室には、3年生8人、4年生9人、大学院生3人の20名が在籍する。このうち、女性が7人いるというから驚く。しかも、女性の方が元気が良いそうだ。
若者たちはシカ肉に関する有効活用を研究。大型哺乳類の捕獲研究、西興部村と協定を結び、捕獲実習も行っている。その他、洞爺湖に浮かぶ周囲10キロの中島に住むシカの体躯の大きさなども調査しているという。狭い面積でひしめきながら餌を食むシカたちが他所のシカに比べ、小さいというのも頷けるところだ。
若者たちは野性動物対策に関する職につきたいと願っているが、いま現在、彼らを迎え入れる職場は殆どない。思うだに残念である。こうした技術や知識を身につけた若者たちを野生動物保護管理の現場で活用するシステムを整備できないものだろうか。彼らなくして、野生動物との共生の未来はないといっても過言ではないだろう。時は待ったなしで進む。
公益社団法人 札幌消費者協会「北海道エゾシカ倶楽部」 代表 武田佳世子
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